【中小企業とIoT】どこから手をつける?会社のデジタル化

【中小企業とIoT】

現在進行形で確実に到来しつつあるIoT社会。
各企業が生き残りのためにすべきことは「会社経営のデジタル化である」という
お話をこのコラムでしてきましたが、さて、どこから手をつければいいのでしょうか。
安価になったセンサーを買ってきて会社のどこを可視化するのか。
データベースを構築して会社のどんなナレッジを蓄積するのか。
これらを見定めないことには始めようがありません。

経営者であれば、センサーを使って計測してみたいことや、
システム化・データベース化したいものは、あれもこれもとすぐに思いつくでしょう。
日頃から会社の中には解決したい問題は山積しているものですからね。
ITやIoTを使って効率化できるなら何でも取り組みたい。そう思う経営者の気持ちはよくわかります。
しかしながら経営者も人間ですし、現場で働くのもまた人間です。
集中して取り組めるものは現実にはそんなに多くない。
逆に、取り組み事項を増やせば増やすほど、力が分散し、徹底がおろそかになり、
次第に中途半端になってしまう。やはり、会社の経営強化に直結するポイントに焦点を絞って取り組みたいですよね。

そのために必要なのは、これからどのようにITを活用した経営を進めていくかという計画書、羅針盤です。
筆者は「IT経営ロードマップ」と呼んでいます。
いわゆる経営計画ですが、特にIT徹底活用の視点から整理した経営計画です。
これから会社としてどこに向かっていくのか、何が重要な経営施策になってくるのか、
ITをどのように活用して経営を強化していくのか、そういったビジョンを描くことが先決です。

IT経営ロードマップを描くために必要な視点には次の3つがあります。
1)過去からの変化蓄積によるミスマッチの解消(目の前の課題)
2)競争優位を産み出す仕掛け(未来に向けた打ち手)
3)やるべきことをきちんと高速回転できるインフラ(企業体質の強靭化)
前述の通り、1)は通常すぐに描けるでしょうから、もっとも重要なのは2)です。
ちなみに3)は、経営のPDCAサイクルを回すという主旨なので、2)が決まれば自明となります。

2)にある「未来」とは10年後とします。10年も経てば、経営体制に変化があるでしょうし、
社内の人材も育ってくる、事業環境も大きく変化する、顧客のニーズも今とは違うものになるし、
人の採用や他社との事業連携だってこれまでの前提は通用しなくなってくる。
その時に、あなたの会社はどういう存在であり続けているのでしょう。社会に対してどんな価値を提供しているのでしょう。

10年後の顧客は?商品は?販路はどうなっているでしょう?
10年後の会社の業務プロセスは、どれだけ機械化・自動化されていますか?
社内でやるべき業務とアウトソースするべき業務はどんな基準で分別できますか?
10年後に会社の強みとして持っているべきノウハウはどんなものですか?
技術、品質、サービス、顧客対応、など、何が中核ノウハウになるんでしょう?
10年後にそうあるために、どんな“学び”が会社として必要ですか?
学ぶべきものは明確ですか?どのように学びますか?何を体系化して引き継いでいくべきですか?
そして、その10年後の会社のために、今から段階的に、ITやIoTをどのように徹底活用していきますか?

先日セミナーでお会いした建築関係の中小企業は、自社が扱う建築資材の業界横断的な
トレーサビリティのインフラを構築することを未来図として描き、そのために、
どんなIoT技術が使えるのか、積極的に質問されていました。
埼玉の事業用サービス会社では、10年先を見据えた会社の経営戦略を策定した上で、
ITとIoT活用の明確なビジョンを定め、その取り組みの第一歩として、この4月から、
センシングすべき業務個所と方法を調査研究するプロジェクトをスタートします。

さあ、あなたの会社もIT経営ロードマップを描くことから始めましょう。

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「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
 東京都中小企業振興公社 多摩支社 HP http://www.technology-tama.jp/
 セミナー等の開催報告 http://www.technology-tama.jp/ipf/etc/


【中小企業とIoT】AIブームが示してくれる、シンプルなこと

【中小企業とIoT】

AI(Artificial Intelligence、人工知能)への関心が高まっています。
Googleの音声検索やiPhoneのSiri、お掃除ロボットなどはすでに身近に利用されていますし、
自動車やドローンの自律制御の研究も進んでいます。
先月には、企業の決算情報をAIが自動的に記事にして配信する取り組みを日経新聞が始めるなど、
AI関連の話題に事欠かない毎日です。

このAIブーム、過去から数えて3回目になるそうです。
情報通信白書によれば、1回目は1950年代後半からで、
コンピューターによる「探索」と「推論」が可能になったことで研究が進展しました。
2回目のブームは1980年代。推論に必要な「知識」をコンピューターに与えることで実用性が高まり、
多数のエキスパートシステムが生み出されました。ただ、様々な情報を知識として
コンピューターに与える作業が大変だったため、対象領域は限定されていました。
そして今回です。「機械学習」によってコンピューターが自ら知識を獲得するようになり、
さらに「ディープラーニング」により複雑な事象の解析へと大きく可能性が広がりました。

この先もさらに発展が見込まれ、多くの仕事がAIにとって代わられるようになるとか、
2045年にはAIが全人類の知性を超える「シンギュラリティ」が到来するなどの予測もされています。
何が本当か、実際どうなるのか、興味は尽きないところですが、
まあ、未来の話はいくらしてもキリがありませんので、
ここでは、我々の日頃のビジネスへのヒントを考察してみたいと思います。

まず、今日現在のAIをシンプルに定義すれば、「過去のデータを使って最適解を導き出す機能」と言えます。
AIというと、シミュレーションとか予測など未来を指し示してくれるイメージの方が強いですが、
その本質は、過去から次の一手を推測するということです。
愚直に過去のデータを洗いざらい参照してくれて、最適と思われる案を示してくれる。
とっても優秀なスタッフですね。

この優秀なスタッフを中小企業でも活用したいわけですが、
なかなかAIシステムそのものを導入するのは費用も高くつきます。
まずは、安価にできることとして、その考え方を真似てみましょう。
それは、シンプルに「過去のデータを活用する」ということです。

過去の販売データから製品別のクレームをリストアップしてデータ化する。
その製品を製造・納入する際、スタッフにそのデータを注意事項として伝えるようにすれば、
不具合を起こさない未然の対応が可能になる。
過去の見積書や設計図に分類のためのタグをつけてサーバに保存しておけば、
類似案件が発生した際に、容易にデータを検索して参照できるようになる。
過去の売上データから、ある商品と一緒に購入された商品をリスト化しておく。
レジの画面にそのリストを表示するようにすれば、入社したてのパートさんでも
オススメ商品をお客様にご案内することができる。

今回のAIブームが起きた最大の要因は、データの収集コストが低下したことと言われていますが、
この恩恵を中小企業でも活用しない手はありません。
例えば、スキャナーで帳票をサーバに保存する機能は今やコピー機に標準装備されています。
ファイル管理ソフトでは、ファイルにタグを付けたり、キーワードで検索したり、
PDFの文字を自動認識したりする機能が利用できます。スマートフォンやタブレット端末を使えば、
これまでPCを持ち込みにくかった製造や工事などの現場でもデータを参照しながら仕事が行えるようになります。
センサーやRFIDで現場の動きを可視化することもできます。
Excelデータをクラウドで共有できるソフトも安価に利用できるようになりました。

AIブームが示しているのは、「過去のデータを活用する」という、
とてもオーソドックスで身近なIT活用の基本なのです。
あらためて、会社の過去のデータの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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