【中小企業とIoT】

AI(Artificial Intelligence、人工知能)への関心が高まっています。
Googleの音声検索やiPhoneのSiri、お掃除ロボットなどはすでに身近に利用されていますし、
自動車やドローンの自律制御の研究も進んでいます。
先月には、企業の決算情報をAIが自動的に記事にして配信する取り組みを日経新聞が始めるなど、
AI関連の話題に事欠かない毎日です。

このAIブーム、過去から数えて3回目になるそうです。
情報通信白書によれば、1回目は1950年代後半からで、
コンピューターによる「探索」と「推論」が可能になったことで研究が進展しました。
2回目のブームは1980年代。推論に必要な「知識」をコンピューターに与えることで実用性が高まり、
多数のエキスパートシステムが生み出されました。ただ、様々な情報を知識として
コンピューターに与える作業が大変だったため、対象領域は限定されていました。
そして今回です。「機械学習」によってコンピューターが自ら知識を獲得するようになり、
さらに「ディープラーニング」により複雑な事象の解析へと大きく可能性が広がりました。

この先もさらに発展が見込まれ、多くの仕事がAIにとって代わられるようになるとか、
2045年にはAIが全人類の知性を超える「シンギュラリティ」が到来するなどの予測もされています。
何が本当か、実際どうなるのか、興味は尽きないところですが、
まあ、未来の話はいくらしてもキリがありませんので、
ここでは、我々の日頃のビジネスへのヒントを考察してみたいと思います。

まず、今日現在のAIをシンプルに定義すれば、「過去のデータを使って最適解を導き出す機能」と言えます。
AIというと、シミュレーションとか予測など未来を指し示してくれるイメージの方が強いですが、
その本質は、過去から次の一手を推測するということです。
愚直に過去のデータを洗いざらい参照してくれて、最適と思われる案を示してくれる。
とっても優秀なスタッフですね。

この優秀なスタッフを中小企業でも活用したいわけですが、
なかなかAIシステムそのものを導入するのは費用も高くつきます。
まずは、安価にできることとして、その考え方を真似てみましょう。
それは、シンプルに「過去のデータを活用する」ということです。

過去の販売データから製品別のクレームをリストアップしてデータ化する。
その製品を製造・納入する際、スタッフにそのデータを注意事項として伝えるようにすれば、
不具合を起こさない未然の対応が可能になる。
過去の見積書や設計図に分類のためのタグをつけてサーバに保存しておけば、
類似案件が発生した際に、容易にデータを検索して参照できるようになる。
過去の売上データから、ある商品と一緒に購入された商品をリスト化しておく。
レジの画面にそのリストを表示するようにすれば、入社したてのパートさんでも
オススメ商品をお客様にご案内することができる。

今回のAIブームが起きた最大の要因は、データの収集コストが低下したことと言われていますが、
この恩恵を中小企業でも活用しない手はありません。
例えば、スキャナーで帳票をサーバに保存する機能は今やコピー機に標準装備されています。
ファイル管理ソフトでは、ファイルにタグを付けたり、キーワードで検索したり、
PDFの文字を自動認識したりする機能が利用できます。スマートフォンやタブレット端末を使えば、
これまでPCを持ち込みにくかった製造や工事などの現場でもデータを参照しながら仕事が行えるようになります。
センサーやRFIDで現場の動きを可視化することもできます。
Excelデータをクラウドで共有できるソフトも安価に利用できるようになりました。

AIブームが示しているのは、「過去のデータを活用する」という、
とてもオーソドックスで身近なIT活用の基本なのです。
あらためて、会社の過去のデータの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
 東京都中小企業振興公社 多摩支社 HP http://www.technology-tama.jp/
 セミナー等の開催報告 http://www.technology-tama.jp/ipf/etc/