【中小企業とIoT】

私自身の話で恐縮ですが、ありがたいご縁があって、今年から農業IoTの開発プロジェクトに取り組む機会をいただきました。
そのプロジェクトは、水田に設置したセンサーから得られたデータをクラウドに集めて解析し、そのクラウドから水田に設置したIoT機器を遠隔制御する、というまさに、IoT全部乗せ、オールインワン的な取り組みです。

このプロジェクトで最大の課題になっているのは、水田に設置するIoT機器の設計と開発です。
屋外に設置し、耐水性が十分あり、必要最低限の電力で動き、しかも、できる限り安価に、というチャレンジで、歯車とかモーターなど機械の仕組み・構造・機構の工夫と、適切な電子制御の設計という「メカトロニクス」の分野です。
数学とか物理が苦手で文系人生を歩んできた筆者ですが、ここに至ってそうは言っていられず、一から勉強のし直しとなりました。このゴールデンウィークはとにかくメカの基本を理解しようと書籍や実験キットを買い込んで猛勉強(一夜漬け?)です。

考えてみると、IoTといえば、安価で入手しやすくなったセンサーによって製造装置や設備の稼働状況を可視化しよう、といった話題や、数多くのセンサーから集まったビッグデータを集積して解析しよう、LPWA(Low Power, Wide Area)と言われるIoTのための新たな通信技術の開発や、映像解析などを活用した人の動作や暗黙知のAIによる分析などの話題を多く目にしますが、これらの話題は、どちらかと言えばソフトウェア分野に偏っていたように感じます。
私のこれまでの興味・関心がそちらに偏向していただけ、という側面もあるのかもしれませんが、そもそも、IoTブームのきっかけとも言えるドイツのインダストリー4.0や、米GEのインダストリアルインターネットのコンセプトも、表面的にはソフトウェア分野のイノベーションとして語られています。

米国のIoTプラットフォームベンダーであるPTC社によれば、IoTのステージは三段階に分けられるそうです。
第一段階が「モノの見える化」、第二段階が「モノの制御」、第三段階がAI活用などによる「モノの最適化・自律化」。
確かに、製造装置の状態が検知できた、カメラで遠隔地の様子が見えた、そうなれば、次に取り組みたいのは、やはり、そのモノ自体の制御ですよね。
現地の機械を遠隔地から動かしたい。人が赴いて操作する代わりに自動的に動作させたい。
大きい括りで言えば「ロボット」ということなのでしょうが、ドローンとかルンバのように、人間の身近で人間の作業をシンプルに代替してくれるメカ、それを通信とコンピューターで制御する。
これからはそういうIoTハードウェアの話題がもっと増えてくるのかもしれません。

その点、農業IoTに取り組み始めた中で重要だなと感じたのは、高精度で高機能なメカばかりではなく、安価で単機能なメカも必要だということ。
企業が新製品の設計開発に取り組む際、後になって機能不足を指摘・批判されるのを避けるため、保険的な意味であれもこれもと機能をてんこ盛りにしてしまうクセのようなものがありますが、IoTの世界ではむしろ人間が行う単純作業の代替としてのシンプルで木訥(ぼくとつ)な機構が求められているように思います。
人手不足という社会的背景もあって、これまで人手で対応してきた比較的単純な作業をIoTで解決したい。
IoT化したことでかえって費用がかかるような本末転倒にならないように、ある程度割り切った機構の採用が求められる。
同じ理由で、数カ所に高度で高性能なメカを配置する一方で、木訥なメカを数多くの場所に配置することもまた求められている。
ここでは、機能を捨てる、そぎ落とす、創意工夫によりコストミニマムで動作させる、というモノづくりの原点のような世界があるように感じます。

以上

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「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
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