【中小企業とIoT】

最近、VR(Virtual Reality・仮想現実)、AR(Augmented Reality・拡張現実)、MR(Mixed Reality・複合現実)、そしてSR(Substitutional Reality・代替現実)なんていうのもありますが、これら、“現実世界とコンピュータ世界を融合した視野・体験を提供してくれる技術” に大注目しています。
「ポケモンGO」でおなじみ、スマートフォンをかざすと現実の空間にキャラクターが登場したり、360℃撮影した映像コンテンツをVRゴーグルで視聴するとあたかもそこにいるような疑似体験ができるといったものですね。

VRの体感エンタテイメント施設が都内に相次いでオープンしたり(池袋、お台場、渋谷、秋葉原)、製造・住宅・医療などさまざまなビジネスでも大きな関心を集めています。
・設計データから完成後の様子を立体的に確認できる(製造、造船、建築等)
・スマートグラスに機械や設備の操作手順を表示してくれる(保守、修理等)
・現場にいかなくても疑似体験トレーニングができる(高所、危険、複雑な操作等)
・ベテランが遠隔指示することで経験の浅いスタッフも戦力となる(点検、保険、農業等)

技術的には黎明期で、巨大なVRゴーグルをかけている姿は、携帯電話がかつてショルダーホンと言われていた時代を彷彿とさせますが(笑)、今後、急速に技術の進展と実用化が進んでいくことが期待され、おそらく、東京オリンピックがやってくる頃には、さまざまな産業で新しいユースケースが実用化されるようになっているのではないでしょうか。

さて、注目のこの技術、中小企業ではどのように活用できるのでしょう?
その前提として考えなければならないのが、「コンテンツ」の問題です。
今後、使いやすくて安価なハードウェアが登場したとして、そのハードウェアで楽しむソフトをどのように用意するか。これを解決しないと前に進みません。
VR映像などの制作にはそれなりの予算が必要ですし、コンテンツ開発を効率アップしてくれるツールが登場して価格低下が期待できたとしても、一つ一つ制作するための企画開発の時間と手間はかかります。少量多品種の中小製造業で、設計データのVR化なんて都度やっていたら日が暮れてしまいます。

そうなると、“Write once, run anywhere”ということで、一度作ったコンテンツを何回も再利用できる経済性のある分野から導入が進んでいくと考えるのが自然です。
エンタテイメントや観光はわかりやすいですよね。一つコンテンツを作れば多くのお客様に見てもらえる。では、ビジネスではどうか。筆者は、「教育」での導入が進んでいくだろうと考えています。製造機械や設備の操作方法、高所や危険箇所での作業手順の事前確認、といった分野です。人材教育や人材派遣などの人材サービスを提供する企業での導入も不可欠になるのではないでしょうか。

もう一つは、単純にスマートフォンのディスプレイとしてスマートグラスを使う形態です。すでにセイコーエプソンのMOVERIOや米VUFINE+などの製品はこれに対応していて、スマートグラスでスマートフォンに着信した電子メールを読めたり、インターネットを閲覧したりできます。

ん?わざわざスマートグラスをかけてメールは読まない?まあそうかもしれませんが、例えば細かな作業指示が書かれた文章や操作マニュアルだったらどうでしょうか?分厚い機械の操作マニュアルを持ち歩くわけにはいかない、スマートフォンやタブレット端末もいいが手がふさがってしまうし、汚れた手袋だと操作できなかったりもする。
スマートグラスなら従業員がかけたメガネに情報が表示される。両手はフリー。文章じゃなくて写真や動画でもOK。作業しながら視界に説明情報が入ってくることで、間違いやミス、事故を減らすことができる。こういった使い方なら、今あるコンテンツ(マニュアルやオフィス文書)をそのまま活用できるので、すぐに実用化できます。

とても未来感のある技術であるVR/AR/MR/SRですが、中小企業にとって足元で深刻な課題となっている人材育成をサポートする有力なツールになるのではないか、筆者はそのように考えて大注目しています。

以上

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「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
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