○○をやってみた。(ユーチューバー風に)

先月、ちょっと大きなイベントを開催する機会を得ました。
静岡県浜松市で10月24日に行ったそのイベントは「コメづくりのための農業ICTカンファレンスin静岡」。
筆者が参加する農業ICTに関するコンソーシアムが主催者となり、
静岡県内外から、農業者、行政機関、民間企業など、236名もの方にご来場いただく、大盛況のイベントになりました。

イベントのテーマは、その名の通り、お米づくりに役立つスマート農業。
水田センサーや水田への自動給水装置、ドローン、ほ場管理システムから、
水田エリアのネットワークインフラとなるLPWAなどの通信サービスまで、
稲作農業者のためのスマート農業製品サービスを集めた講演会と展示会です。

駅前の立地の良いホールを予約し、さあ、何人来ていただけるかとドキドキ、ワクワク準備をして当日を迎えたらなんと満員御礼。
一般的なICTでもなく、農業ICT全般でもなく、お米作りに特化したICTのイベントで、
しかも、のぞみが停車しない浜松市(すみません・・)で開催されたイベントにこれだけの人が集まったのは、かなりの熱量が世の中で動いていることの現れ。
奇しくも、TBSの日曜劇場「下町ロケット」では、これから農業を舞台にしたストーリーが展開するそうですが、一つの時代の変化を感じずにいられません。

さて、講演会は農水省の研究専門官の基調講演からスタート。
日本の農業と農業ICTの課題認識や行政の方向性など大きな流れをご説明いただき、続いて、我々コンソーシアムから事業報告を行いました。
この事業では、静岡県袋井市と磐田市に合計400台もの農業IoTデバイスを配置して実証研究を行っているのですが、
これだけの量の機器を農業者が利用してみてはじめて分かったことや気づいたこと、課題などを赤裸々にご紹介しました。

続いて出展各社によるショートプレゼンテーション。
各社製品の紹介をいただきつつ、同様に、各社の製品の利用現場ででてきた課題や解決策をご披露いただき、
なるほど、課題は一つではないし、解決方法もいろいろな切り口があるんだなあと大変勉強になりました。

パネルディスカッションでは、静岡県以外の地域で行った実証試験からのフィードバックがあり、
青森県ではお米とリンゴの複合経営、愛知県ではお米とイチゴ、高知県ではお米とショウガ、大阪府では棚田の環境保全的なお米栽培といった、
各地様々な経営事情の下での水田センサーの活用とそこから得られた気づきをご披露いただきました。
同じ水田センサーを使っても、水位を重視するのか水温を重視するのかなど、個々の経営事情によって使い方は様々であることがわかりました。

全体を振り返ってみると、共通していたのは、「□□であるべき」とか「△△という技術は役に立つはず」ではなくて、
「○○をやってみた」という実践結果のフィードバックが中心だったということ。
実践経験の中でのみ得られる課題や、現場で使ってみてはじめて引き出される真に役立つノウハウ。
展示会場でもそういった具体的な話題について来場者と出展社が意見交換をしていました。
導入の手順、工事方法や工期、必要な道具、運用方法や製品の細かな使用方法などなど。

そういえば、先日行われたTIF(多摩IoTフォーラム)の第三回ワークショップでも同じような気づきがありました。
先駆的にIoTに取り組まれている企業様に事例発表をしていただいたのですが、実践されている方のお話しは抽象的ではなく具体的。
一つ一つの説明や解説が一般論ではなく実践経験に裏付けられた各論のお話しなので、頭にすっと入ってくる、わかりやすい。
そして、やってみようという気になりやすい。「私はこうしました。」という説明のなんと力強いことか。

世に出た新しい技術を右から左にそのまま利用できるかというと、農業や中小商工業ではすんなりとはいかない。
ヒトモノカネのリソースが限られているし、何より現場がきわめて多様。
どうやったら上手に使いこなせるのか、範囲や手順はどうか、そういった“適合方法”を探っていくプロセスが不可欠。
先進事例を学びつつも、最終的には自社にフィットする方法を探らなければ効果を出し得ない。
ICTをどう使いこなすか。「○○をやってみた」という“使いこなしの研究”が実は大切なステップなのかもしれないと最近感じています。