とある秋晴れの日。

東海道新幹線を掛川駅で降り、在来線に乗り継いで袋井駅で下車。
人影まばらな南口のロータリーから先頭のタクシーに乗車すると、
どうやら運転手さんはぽかぽか陽気で居眠り混じりだった様子。
行き先を告げ、タクシーが田園地帯にするすると走り出す。
心地よい揺れに身を任せ、まったりとした空気の中、
ありがちな助手席のヘッドレストにかかる広告にぼんやり目を向けると、
ふと「楽天ペイ」の文字に目がとまりました。

皆さんはご存知ですか、「楽天ペイ」。
最近流行り始めているモバイル決済サービスの一つで、
スマホ一つあれば代金の支払いができてしまうキャッシュレスサービス。
中国はその先進国で、すでにモバイル決済の普及率が98%を超えているそうですが、
彼の地でシェアが高いのが「アリペイ/ALIPAY/支付宝」と「ウィーチャットペイ/WeChatPay/微信支付」。
日本へのインバウンド旅客対策として空港や土産物店でも少しずつ導入が進んでいるので、
その名前を見た、聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

ITコンサルタントという職業柄もあり、これはぜひ試してみようと睡魔を振り払い、
スマホに楽天ペイアプリをインストール。
決済用のクレジットカードが登録されているいつもの楽天アカウントでログインすれば、はい、準備完了。
目的地に到着し、60歳代とおぼしき運転手さんに楽天ペイ支払いをトライしたいと告げると、
予想通り運転手さんにとっても初めての客とのこと。
件の助手席ヘッドレストの広告にはバーコードが印刷されていて、それを楽天ペイアプリで読み取ると、
なるほど、そのタクシー会社の名前が表示される。
そのままタクシー代金を自分で入力し、決済完了をタップ、その画面を運転手さんに見せれば万事OK。
うーん、なんと簡単なことか。シンプルで早い。
元来心配性の私は、タクシーを降りる際はいつも、サイフを持ったかな、スマホは忘れてないかな、
上着も抱えなきゃと、と多数のチェック項目をこなさなきゃならず、なんとも慌ただしい時を過ごすんですが、
これは釣銭やレシートのやりとりもなく、スマホ一つでまさにスマート。

IT業界の傾向として、最近はこのように個人の生活シーンから新しいITサービスがお目見えすることが増えてきました。
一昔前は会社でパソコンを使い始め、その後しばらくして価格が安くなってから自宅用に購入する、
といったように“会社→個人”という流れが当たり前でした。
それが、iPhoneとか、最近だとドローン、VRグラスや360度カメラ、スマートスピーカーなんかも典型的ですし、
SNSもそうですが、世の中に個人向けのIT製品サービスが先陣を切って登場し、個人が最初に使い始める。
会社は置いてきぼりで、会社よりも個人の方がよほどITを使いこなしたりする時代になってきた。

この、個人先行で使われ始めた最新ITを会社でも使おうよ、
例えばSNSをマーケティングで使う、タブレット端末を業務で使う、ドローンをプロモーションビデオの撮影に使う、
なんていう動きを「コンシューマライゼーション」と言います。

― コンシューマライゼーションとは、企業の情報システムで一般消費者向けのIT製品やサービスを利用すること。
  また、IT関連製品や技術の進歩・革新を一般消費者向け分野が主導し、
  企業向けIT分野がそれを後追いして取り込むようになる傾向のこと。 ―
  (出所:http://e-words.jp/w/コンシューマライゼーション.html)

どんどん便利になっていくツールを仕事でも使わない理由がない、というわけですが、
IoTの分野も多分にこういう傾向があります。
アマゾンDASHボタンを使って職制呼出をしたり、スマートスピーカーであんどん表示の切り替えを行ったりしている旭鉄工様、
Sony製のMESHというセンサーキットを使ってプレス機の稼働回数を記録している石原金属化工様、
GoogleHomeで薬局の在庫問合せをしている薬局お茶の水ファーマシー様、
Googleの画像認識AIを使ってキュウリの自動等級仕分けをしている静岡県の農家さんなどなど。

まあ、いきなり画像認識AIなんてハードルが高すぎますが、
そういう個人が使うITに“興味を持ってみる”ことは誰にでもできることではないでしょうか。
興味・関心を持って情報に触れ、実際に五感で体感したりすることで、
「もしかしたら仕事に役立つかも」という気づきが生まれる。
「だったらこんなこともできないかな」とアイディアが膨らんでいく。
日頃からそんな気持ちで新しいITサービスに触れていただくのが、実は、IoT/IT活用の早道なのかもしれません。