【中小企業とIoT】中小企業にとってのVR/ARを考える

【中小企業とIoT】

最近、VR(Virtual Reality・仮想現実)、AR(Augmented Reality・拡張現実)、MR(Mixed Reality・複合現実)、そしてSR(Substitutional Reality・代替現実)なんていうのもありますが、これら、“現実世界とコンピュータ世界を融合した視野・体験を提供してくれる技術” に大注目しています。
「ポケモンGO」でおなじみ、スマートフォンをかざすと現実の空間にキャラクターが登場したり、360℃撮影した映像コンテンツをVRゴーグルで視聴するとあたかもそこにいるような疑似体験ができるといったものですね。

VRの体感エンタテイメント施設が都内に相次いでオープンしたり(池袋、お台場、渋谷、秋葉原)、製造・住宅・医療などさまざまなビジネスでも大きな関心を集めています。
・設計データから完成後の様子を立体的に確認できる(製造、造船、建築等)
・スマートグラスに機械や設備の操作手順を表示してくれる(保守、修理等)
・現場にいかなくても疑似体験トレーニングができる(高所、危険、複雑な操作等)
・ベテランが遠隔指示することで経験の浅いスタッフも戦力となる(点検、保険、農業等)

技術的には黎明期で、巨大なVRゴーグルをかけている姿は、携帯電話がかつてショルダーホンと言われていた時代を彷彿とさせますが(笑)、今後、急速に技術の進展と実用化が進んでいくことが期待され、おそらく、東京オリンピックがやってくる頃には、さまざまな産業で新しいユースケースが実用化されるようになっているのではないでしょうか。

さて、注目のこの技術、中小企業ではどのように活用できるのでしょう?
その前提として考えなければならないのが、「コンテンツ」の問題です。
今後、使いやすくて安価なハードウェアが登場したとして、そのハードウェアで楽しむソフトをどのように用意するか。これを解決しないと前に進みません。
VR映像などの制作にはそれなりの予算が必要ですし、コンテンツ開発を効率アップしてくれるツールが登場して価格低下が期待できたとしても、一つ一つ制作するための企画開発の時間と手間はかかります。少量多品種の中小製造業で、設計データのVR化なんて都度やっていたら日が暮れてしまいます。

そうなると、“Write once, run anywhere”ということで、一度作ったコンテンツを何回も再利用できる経済性のある分野から導入が進んでいくと考えるのが自然です。
エンタテイメントや観光はわかりやすいですよね。一つコンテンツを作れば多くのお客様に見てもらえる。では、ビジネスではどうか。筆者は、「教育」での導入が進んでいくだろうと考えています。製造機械や設備の操作方法、高所や危険箇所での作業手順の事前確認、といった分野です。人材教育や人材派遣などの人材サービスを提供する企業での導入も不可欠になるのではないでしょうか。

もう一つは、単純にスマートフォンのディスプレイとしてスマートグラスを使う形態です。すでにセイコーエプソンのMOVERIOや米VUFINE+などの製品はこれに対応していて、スマートグラスでスマートフォンに着信した電子メールを読めたり、インターネットを閲覧したりできます。

ん?わざわざスマートグラスをかけてメールは読まない?まあそうかもしれませんが、例えば細かな作業指示が書かれた文章や操作マニュアルだったらどうでしょうか?分厚い機械の操作マニュアルを持ち歩くわけにはいかない、スマートフォンやタブレット端末もいいが手がふさがってしまうし、汚れた手袋だと操作できなかったりもする。
スマートグラスなら従業員がかけたメガネに情報が表示される。両手はフリー。文章じゃなくて写真や動画でもOK。作業しながら視界に説明情報が入ってくることで、間違いやミス、事故を減らすことができる。こういった使い方なら、今あるコンテンツ(マニュアルやオフィス文書)をそのまま活用できるので、すぐに実用化できます。

とても未来感のある技術であるVR/AR/MR/SRですが、中小企業にとって足元で深刻な課題となっている人材育成をサポートする有力なツールになるのではないか、筆者はそのように考えて大注目しています。

以上

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「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
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 セミナー等の開催報告 http://www.technology-tama.jp/ipf/etc/


【中小企業とIoT】見聞録 青梅市:武州工業株式会社様

【中小企業とIoT】

梅雨入り間近の6月初旬、多摩IoTフォーラムの活動の一環で、青梅市の武州工業株式会社に訪問見学の機会をいただきました。
同社は、IoTを先駆的に活用している中小企業として高く注目されており、「攻めのIT経営100選」や「はばたく中小企業300」にも選定されています。
この日は、林英夫社長からとても貴重なお話をお伺いすることができましたので、簡単な訪問レポートとしてまとめさせていただきます。
(※内容については林社長に事前のご確認と開示のご了承をいただいています。)

武州工業株式会社は、昭和26年創業の自動車用熱交換器パイプ、および板金部品の製造を行なう従業員160人ほどの会社です。
青梅から世界へ、を合言葉に、日本に根差しながらグローバル市場でコスト競争力ある高品質な製品を生産し供給しています。
同社のローコストなものづくりを実現するカギになっているのが、1987年から導入し改善し続けている「一個流し生産ライン」。
この一個流し生産ラインでは、生産から検査までを一人の従業員が担います。
同社に検査課という組織はありませんので、生産した商品は原則としてそのまま出荷されることになります。
部品を一つ生産するたびに検査を行うことで全数品質保証を実現する、同社の競争力の源泉となっている仕組みです。

そして、この仕組みを下支えするのが、一つには多能工化であり、もう一つが設備の自社開発への取り組みです。
特に後者は、生産性と品質を向上させるための設備や治具を、従業員自ら考え、工夫して整備していく、それにより道具を使う腕前も向上していく、という同社にとってとても重要な基盤となっています。
自律性が大切になるこの考え方を、林社長は「ラーメン屋スタイル」と説明されました。
つまり、一人一人が一軒のラーメン屋の店主としてラーメン一杯に責任を持つ。スープだけ作る人、盛り付けだけする人、と分業するのではなく、仕込みから道具の準備や整備まで含めて製品一つの完成に最初から最後まで責任を持つ。
道具を作り(自社設備開発)→人に任せ(多能工)→人を信頼する(一個流し生産ライン)、そういった打ち手の連鎖によって、自動車部品という長期の商品供給が求められる取引でも品質保証し続けられる仕組みが実現されているのです。

IoTは、まさにこの自社設備開発という観点で利活用が進められていました。
当日見学した、iPod touchを工作機械に取り付け、内蔵の振動センサーによって機械の動作を検知して生産個数をカウントする仕組みも社内で構築したもの。
計測されたデータは時系列に展開され、生産の“ペース”が可視化されることで、“店主”は計画と実績との差を生産途中で自ら確認しながら作業を進めていくことができます。
他にも、製造工程の最終段階で利用するカメラ画像解析による検査装置も、同社独自仕様で開発するなど、いずれもが、一個流し生産ラインを支える大切な道具となっています。

訪問を終えて強く印象に残ったのは、“一つ一つの打ち手がバラバラではなく、一貫性があって全体として整合している”という点です。
IoTの事例というと、どうしてもセンサーの機能や蓄積されたデータの可視化方法に関心が行きがちですが、やはり、IoTは手段であって目的ではないんですね。
同社はまさにそれを実践していて、そもそもどういう経営をしたいのかという経営理念が先にあり、それを実現する幾多の打ち手があって、その中にIoTやITが位置づけられている。
それ故に、打ち手同士が自然と相互に有機的に連鎖し合ってさらに全体の仕組みを強靱にしていく。IoTという新しい技術もしっかりと“なじんで”いる。
主客が明確であると、迷いなく、覚悟を持って投資することができるんですね。

以上

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【中小企業とIoT】AIを組み合わせて使う!?なるほどです。

【中小企業とIoT】

IoTのように日進月歩のテクノロジーを経営に活かしていくためには、急速に流れていく大量の情報の中から、今の自社にフィットする情報をタイムリーに的確にキャッチすることがとても重要です。

ちなみに、筆者の情報収集方法は主に3つあります。
1つはテレビとネット。マスメディアですね。ニュースサイトやTV番組、SNSを通じて世の中が何に関心を持っているのか、価値判断の軸はどう流動しているのか、そういうマーケットの機微を見ています。
2つめは現場。これは企業の製造現場や商店の店先、ショッピングモールや公共交通機関、書店においてある書籍などから、現実世界の興味関心、建前と本音、理想と現実、マスメディアとリアルとの温度差などを感じます。
そして3つめは新聞です。マスメディアでは話題にならないけど、現実社会の動きを示してくれる小さくても一つ一つの事実が各紙のフィルターを通して掲載され、思わぬ発見やヒント、きっかけをくれます。

今回のメルマガでは、そんな新聞紙面から最近のIoT関連ニュースを3つほどピックアップしてみました。

◆「イヤホンで個人認証 NEC」 (日経産業新聞 2017/5/26)
ウェアラブルデバイスは筆者としても大いに注目しているジャンルです。アップルウォッチなどの腕時計型端末も登場していますが、さらに小型化して、耳にさして使うイヤホン型の機器をNECが開発したそうです。小さな筐体にマイク、スピーカー、複数のモーションセンサを搭載していて、顔の向きや姿勢、屋内での移動情報を計測したり、耳の中の大きさを計測して個人を特定することができるそうです。
まだ実証実験用プロトタイプ端末だそうですが、デバイスの小型化は止まるところを知らず、どんどん進んでいきますね。ちなみに、NECのサイトには「ヒアラブルデバイス」という新しい言葉で紹介されてました。

◆「複数のAI、監査に活用 トーマツが特許」 (日経産業新聞 2017/4/11)
AIも昨今大注目のビッグワードですが、そのAIを複数組み合わせて使ってしまおうという記事。AIは過去のデータを効率よく分析し傾向を示してくれる一芸に秀でたスタッフみたいなものですから、それは一人よりも二人がいい。一つのAIよりも複数のAIを組み合わせた方が確かに精度は上がりそうです。
記事には、「財務諸表や営業記録、交渉履歴のテキスト分析を通じ、いち早く経営の傾向を把握。製品の品質管理や企画、マーケティングの精度を向上させる。」とあります。以前、AI関連の記事で、“経営者もAIにとって代られるのか?”なんていうショッキングな内容を目にしたこともありますが、意外や意外、現実になるのかも・・?

◆「パン作りAIで効率化 配置最適化、ロボと連動」 (日経産業新聞 2017/5/24)
福井県にあるパン類の製造・卸業を営む株式会社オーカワパン(従業員75名)では、AIを使って製造や人員配置の最適化に取り組んでいます。一つはAIを使った業務管理システムで、スキルや人数、製造手順に応じて毎日の人員配置と製造計画を組み上げる。もう一つは、AIと連動した自動成型ロボットによる製造時間の短縮。日々の実績やエラーの情報をフィードバックして精度を上げていきます。
生産計画をコンピューターに計算させる取り組みは以前からありますが、AI活用のメリットは、実績やエラーを加味して学習していくところ。最初は精度が悪くても、徐々に精度が向上し、実態に近いものになっていくんです。子供と一緒ですね。
この分野、中小企業での取り組みもどんどん進みそうな気がしています。

そうそう、パンとAIと言えば「BakeryScan(ベーカリースキャン)」もチェックしておきましょう。兵庫県の株式会社ブレイン(従業員20名)が開発したパン屋さん向けのレジ端末で、トレイに乗せたパンを画像スキャンしてレジ精算できてしまうもの。10個程度のパンを一瞬で読み取って種類と金額をはじき出してくれるので、新人も即戦力としてレジ係ができる。すでに100店舗以上に導入されているそうですよ。
焼きたてパンにはバーコードは付けられない、手作りだから形状も微妙に違うなど、なかなか簡単な開発ではなかったそうですが、お手本データによる学習方法を工夫したり、100%の精度を求めず最後は人が修正する前提の仕組みにするなど、「技術」を「実用」にうまく適用した大変参考になる事例です。

以上

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【中小企業とIoT】筆者がこの連休に猛勉強したIoT

【中小企業とIoT】

私自身の話で恐縮ですが、ありがたいご縁があって、今年から農業IoTの開発プロジェクトに取り組む機会をいただきました。
そのプロジェクトは、水田に設置したセンサーから得られたデータをクラウドに集めて解析し、そのクラウドから水田に設置したIoT機器を遠隔制御する、というまさに、IoT全部乗せ、オールインワン的な取り組みです。

このプロジェクトで最大の課題になっているのは、水田に設置するIoT機器の設計と開発です。
屋外に設置し、耐水性が十分あり、必要最低限の電力で動き、しかも、できる限り安価に、というチャレンジで、歯車とかモーターなど機械の仕組み・構造・機構の工夫と、適切な電子制御の設計という「メカトロニクス」の分野です。
数学とか物理が苦手で文系人生を歩んできた筆者ですが、ここに至ってそうは言っていられず、一から勉強のし直しとなりました。このゴールデンウィークはとにかくメカの基本を理解しようと書籍や実験キットを買い込んで猛勉強(一夜漬け?)です。

考えてみると、IoTといえば、安価で入手しやすくなったセンサーによって製造装置や設備の稼働状況を可視化しよう、といった話題や、数多くのセンサーから集まったビッグデータを集積して解析しよう、LPWA(Low Power, Wide Area)と言われるIoTのための新たな通信技術の開発や、映像解析などを活用した人の動作や暗黙知のAIによる分析などの話題を多く目にしますが、これらの話題は、どちらかと言えばソフトウェア分野に偏っていたように感じます。
私のこれまでの興味・関心がそちらに偏向していただけ、という側面もあるのかもしれませんが、そもそも、IoTブームのきっかけとも言えるドイツのインダストリー4.0や、米GEのインダストリアルインターネットのコンセプトも、表面的にはソフトウェア分野のイノベーションとして語られています。

米国のIoTプラットフォームベンダーであるPTC社によれば、IoTのステージは三段階に分けられるそうです。
第一段階が「モノの見える化」、第二段階が「モノの制御」、第三段階がAI活用などによる「モノの最適化・自律化」。
確かに、製造装置の状態が検知できた、カメラで遠隔地の様子が見えた、そうなれば、次に取り組みたいのは、やはり、そのモノ自体の制御ですよね。
現地の機械を遠隔地から動かしたい。人が赴いて操作する代わりに自動的に動作させたい。
大きい括りで言えば「ロボット」ということなのでしょうが、ドローンとかルンバのように、人間の身近で人間の作業をシンプルに代替してくれるメカ、それを通信とコンピューターで制御する。
これからはそういうIoTハードウェアの話題がもっと増えてくるのかもしれません。

その点、農業IoTに取り組み始めた中で重要だなと感じたのは、高精度で高機能なメカばかりではなく、安価で単機能なメカも必要だということ。
企業が新製品の設計開発に取り組む際、後になって機能不足を指摘・批判されるのを避けるため、保険的な意味であれもこれもと機能をてんこ盛りにしてしまうクセのようなものがありますが、IoTの世界ではむしろ人間が行う単純作業の代替としてのシンプルで木訥(ぼくとつ)な機構が求められているように思います。
人手不足という社会的背景もあって、これまで人手で対応してきた比較的単純な作業をIoTで解決したい。
IoT化したことでかえって費用がかかるような本末転倒にならないように、ある程度割り切った機構の採用が求められる。
同じ理由で、数カ所に高度で高性能なメカを配置する一方で、木訥なメカを数多くの場所に配置することもまた求められている。
ここでは、機能を捨てる、そぎ落とす、創意工夫によりコストミニマムで動作させる、というモノづくりの原点のような世界があるように感じます。

以上

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【中小企業とIoT】4MとIoTと標準化

【中小企業とIoT】

IoTをテーマにしている本コラム。今回は、あらたな年度のスタートということで、
この多摩地区でも多く活躍されている中小製造業にとってのIoTの活用ポイントを整理してみたいと思います。

まず、製造業にとっては基本中の基本だと思いますが、
生産を行っていくうえで大切な要素は4つあると言われていますね。生産の4要素「4M」です。
・Machine:設備や機械
・Material:材料や部品
・Method:作業方法や手順
・Man:作業者

求められるPQCDSM(生産性、品質、コスト、納期、安全、意欲)を達成するために、
この4要素を投入し、生じる“ばらつき”をコントロールするのが製造業のマネジメント目標。
そのための手段として様々なメソッドやツールを活用するわけですが、
もちろんIoTもその手段の一つに位置付けられます。

センサーによりMachineの生産個数や稼働状況を把握しやすくしたり、
故障防止・不稼働時間の削減に役立てたり、Materialの入出庫管理を自動化して
在庫適正化に活用するなどはIoTの応用分野としてよく耳にします。

しかし、中小製造業の中には、試作中心で少量多品種型の生産スタイルの企業も多く存在しています。
そういった企業の場合、MachineやMaterialよりも、4Mのうち残りの2つ、
MethodとManの方が競争力に直結することが多いのではないでしょうか。
であればむしろ、IoTの活用を真剣に検討すべきはこの2つであるはず。
安価で入手しやすくなったセンサー等を活用して、MethodとManのばらつきを定量的に可視化することで、
適切なカイゼン・強化を行う。これこそが、中小製造業にとってのIoTの活用ポイントであると筆者は考えます。

そしてその大前提として、仕事の標準化が極めて重要になります。
ここで言う標準化は、組織全体の「平均化」ではなく、ここまではやろうよ、
という目指すべき到達点、すなわち、組織としての「目標値の標準化」です。
標準を達成すればすぐさま次の目標値をあらたな標準として定め、
常により高いものにレベルアップしていく。つまり標準化とは、企業として技術を高めていくための仕組みです。
「自社の標準はこのレベル」と胸を張れるように腕前を高めていくこと。
これは製造業に限らずすべての企業において必要な視点であり、この標準を定量的で計測可能なものにすることが肝心です。

現場を定量的に可視化できれば、問題の所在も、その問題の程度(大きさ)も明確になります。
目標とするPQCDSMとのギャップも定量的にとらえることができ、
そのギャップを埋めるための努力の過程も、打ち手の効果も同じく定量的に把握できるので、
PDCAの実効性も自然と向上していく。
さらにこれはスタッフの育成・評価とも直結します。仕事の標準を定量的に定義することで、
現在地と達成目標が明確になる。トレーニングによるスキルの伸びもスタッフと定量的に共有することで、
具体的で効果的な人材育成計画につながっていく。

注意したいのは、なんでもかんでも標準化すればいいってものではないということです。
標準化そのものが目的になってしまわないように、絶対に標準化すべき点を標準化してください。
すなわち、企業として技術を高めていくべき勝負所を標準化するのです。
そして、IoTを活用してそれを定量的に計測して徹底的にマネジメントしていく。
モノのインターネットという意味のIoTですが、モノだけのものではありません。
今までは定性的にしかとらえられなかった、あるいは、定量的にとらえにくかったヒトの動きを
モノの動きを通じて可視化することができる。この先のあなたの会社のありたい姿、
そして目標となる標準、会社として伸ばしたいコアスキルを徹底して伸ばせる仕組み、
これをIoTを十分に活かして作り上げていきましょう。

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【中小企業とIoT】どこから手をつける?会社のデジタル化

【中小企業とIoT】

現在進行形で確実に到来しつつあるIoT社会。
各企業が生き残りのためにすべきことは「会社経営のデジタル化である」という
お話をこのコラムでしてきましたが、さて、どこから手をつければいいのでしょうか。
安価になったセンサーを買ってきて会社のどこを可視化するのか。
データベースを構築して会社のどんなナレッジを蓄積するのか。
これらを見定めないことには始めようがありません。

経営者であれば、センサーを使って計測してみたいことや、
システム化・データベース化したいものは、あれもこれもとすぐに思いつくでしょう。
日頃から会社の中には解決したい問題は山積しているものですからね。
ITやIoTを使って効率化できるなら何でも取り組みたい。そう思う経営者の気持ちはよくわかります。
しかしながら経営者も人間ですし、現場で働くのもまた人間です。
集中して取り組めるものは現実にはそんなに多くない。
逆に、取り組み事項を増やせば増やすほど、力が分散し、徹底がおろそかになり、
次第に中途半端になってしまう。やはり、会社の経営強化に直結するポイントに焦点を絞って取り組みたいですよね。

そのために必要なのは、これからどのようにITを活用した経営を進めていくかという計画書、羅針盤です。
筆者は「IT経営ロードマップ」と呼んでいます。
いわゆる経営計画ですが、特にIT徹底活用の視点から整理した経営計画です。
これから会社としてどこに向かっていくのか、何が重要な経営施策になってくるのか、
ITをどのように活用して経営を強化していくのか、そういったビジョンを描くことが先決です。

IT経営ロードマップを描くために必要な視点には次の3つがあります。
1)過去からの変化蓄積によるミスマッチの解消(目の前の課題)
2)競争優位を産み出す仕掛け(未来に向けた打ち手)
3)やるべきことをきちんと高速回転できるインフラ(企業体質の強靭化)
前述の通り、1)は通常すぐに描けるでしょうから、もっとも重要なのは2)です。
ちなみに3)は、経営のPDCAサイクルを回すという主旨なので、2)が決まれば自明となります。

2)にある「未来」とは10年後とします。10年も経てば、経営体制に変化があるでしょうし、
社内の人材も育ってくる、事業環境も大きく変化する、顧客のニーズも今とは違うものになるし、
人の採用や他社との事業連携だってこれまでの前提は通用しなくなってくる。
その時に、あなたの会社はどういう存在であり続けているのでしょう。社会に対してどんな価値を提供しているのでしょう。

10年後の顧客は?商品は?販路はどうなっているでしょう?
10年後の会社の業務プロセスは、どれだけ機械化・自動化されていますか?
社内でやるべき業務とアウトソースするべき業務はどんな基準で分別できますか?
10年後に会社の強みとして持っているべきノウハウはどんなものですか?
技術、品質、サービス、顧客対応、など、何が中核ノウハウになるんでしょう?
10年後にそうあるために、どんな“学び”が会社として必要ですか?
学ぶべきものは明確ですか?どのように学びますか?何を体系化して引き継いでいくべきですか?
そして、その10年後の会社のために、今から段階的に、ITやIoTをどのように徹底活用していきますか?

先日セミナーでお会いした建築関係の中小企業は、自社が扱う建築資材の業界横断的な
トレーサビリティのインフラを構築することを未来図として描き、そのために、
どんなIoT技術が使えるのか、積極的に質問されていました。
埼玉の事業用サービス会社では、10年先を見据えた会社の経営戦略を策定した上で、
ITとIoT活用の明確なビジョンを定め、その取り組みの第一歩として、この4月から、
センシングすべき業務個所と方法を調査研究するプロジェクトをスタートします。

さあ、あなたの会社もIT経営ロードマップを描くことから始めましょう。

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【中小企業とIoT】AIブームが示してくれる、シンプルなこと

【中小企業とIoT】

AI(Artificial Intelligence、人工知能)への関心が高まっています。
Googleの音声検索やiPhoneのSiri、お掃除ロボットなどはすでに身近に利用されていますし、
自動車やドローンの自律制御の研究も進んでいます。
先月には、企業の決算情報をAIが自動的に記事にして配信する取り組みを日経新聞が始めるなど、
AI関連の話題に事欠かない毎日です。

このAIブーム、過去から数えて3回目になるそうです。
情報通信白書によれば、1回目は1950年代後半からで、
コンピューターによる「探索」と「推論」が可能になったことで研究が進展しました。
2回目のブームは1980年代。推論に必要な「知識」をコンピューターに与えることで実用性が高まり、
多数のエキスパートシステムが生み出されました。ただ、様々な情報を知識として
コンピューターに与える作業が大変だったため、対象領域は限定されていました。
そして今回です。「機械学習」によってコンピューターが自ら知識を獲得するようになり、
さらに「ディープラーニング」により複雑な事象の解析へと大きく可能性が広がりました。

この先もさらに発展が見込まれ、多くの仕事がAIにとって代わられるようになるとか、
2045年にはAIが全人類の知性を超える「シンギュラリティ」が到来するなどの予測もされています。
何が本当か、実際どうなるのか、興味は尽きないところですが、
まあ、未来の話はいくらしてもキリがありませんので、
ここでは、我々の日頃のビジネスへのヒントを考察してみたいと思います。

まず、今日現在のAIをシンプルに定義すれば、「過去のデータを使って最適解を導き出す機能」と言えます。
AIというと、シミュレーションとか予測など未来を指し示してくれるイメージの方が強いですが、
その本質は、過去から次の一手を推測するということです。
愚直に過去のデータを洗いざらい参照してくれて、最適と思われる案を示してくれる。
とっても優秀なスタッフですね。

この優秀なスタッフを中小企業でも活用したいわけですが、
なかなかAIシステムそのものを導入するのは費用も高くつきます。
まずは、安価にできることとして、その考え方を真似てみましょう。
それは、シンプルに「過去のデータを活用する」ということです。

過去の販売データから製品別のクレームをリストアップしてデータ化する。
その製品を製造・納入する際、スタッフにそのデータを注意事項として伝えるようにすれば、
不具合を起こさない未然の対応が可能になる。
過去の見積書や設計図に分類のためのタグをつけてサーバに保存しておけば、
類似案件が発生した際に、容易にデータを検索して参照できるようになる。
過去の売上データから、ある商品と一緒に購入された商品をリスト化しておく。
レジの画面にそのリストを表示するようにすれば、入社したてのパートさんでも
オススメ商品をお客様にご案内することができる。

今回のAIブームが起きた最大の要因は、データの収集コストが低下したことと言われていますが、
この恩恵を中小企業でも活用しない手はありません。
例えば、スキャナーで帳票をサーバに保存する機能は今やコピー機に標準装備されています。
ファイル管理ソフトでは、ファイルにタグを付けたり、キーワードで検索したり、
PDFの文字を自動認識したりする機能が利用できます。スマートフォンやタブレット端末を使えば、
これまでPCを持ち込みにくかった製造や工事などの現場でもデータを参照しながら仕事が行えるようになります。
センサーやRFIDで現場の動きを可視化することもできます。
Excelデータをクラウドで共有できるソフトも安価に利用できるようになりました。

AIブームが示しているのは、「過去のデータを活用する」という、
とてもオーソドックスで身近なIT活用の基本なのです。
あらためて、会社の過去のデータの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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【中小企業とIoT】今後50年の会社経営に求められる大きな仕事

【中小企業とIoT】

「Airbnb(エアービーアンドビー)」や「Uber(ウーバー)」という新ビジネスの話題を耳にしたことがあるでしょう。前者は空き部屋を旅行者に貸し出す民間宿泊業的なもの。
後者は自動車の相乗り的なものですね。いずれも昨年話題になった「シェア」型のビジネスですが、このシェアという概念は、単なるブームではなく今後の会社経営において必然となるビジネストレンドとして、その重要性は高まっていくだろうと筆者は考えています。

2020年に東京に二回目の五輪がやってきます。前回開催の1964年から実に56年ぶりとなりますが、振り返ってみればこの50年間、日本はとても大きく変化してきました。
カー・クーラー・カラーテレビを筆頭に、ウォークマンやウォッシュレット、携帯電話、コンビニエンスストアなどなど、本当に様々な製品やサービスが登場し、おかげで日本はとても選択肢豊かな社会になりました。

でも、この時代でも、実は全く変化していなかった部分が一つあります。
それは、世の中で働いている人の比率です。
全人口に占める年齢層別の人口構成比を1965年と2000年を比較してみますと、年少人口(14歳以下)の比率は全体の25%から15%に、老年人口(65歳以上)の比率は6%から17%に変化しています。
そう、少子高齢化ですね。では、生産年齢人口(15歳~64歳)の比率はというと、この間、68%~69%でほとんど変化していません。

ところが、その生産年齢人口の比率は東京五輪の年には全体の59%へと一気に10ポイントも急減し、2050年にはさらに52%まで減ることが予測されています。
人口でも、2000年比で2050年には58%にまで大幅に減少、しかも、老年人口は実はほとんど減らない。
つまり、わかりやすく言えば、これまでの50年間は会社という存在は一定のまま、社会が子供中心から高齢者中心にシフトした時代でしたが、これからの50年間は、社会は一定のまま、会社、働き手だけが猛スピードで半減する時代になるのです。

もしこのまま会社の数が変わらないならどの会社も人手不足になります。
必然的に、会社数は減るし、商圏、商品、サービスレベル、会社の機能なども見直しを迫られる。
一つの会社ですべてをまかなおうというのが土台無理になる。
事業構造の枠内で経営を考えるのではなく、事業構造の枠組みそのものを考え直さないと立ち行かなくなります。
冒頭のシェアに象徴される事業連携や再編が不可欠になるというわけです。

すでに、シェア型ビジネスの例は枚挙にいとまがありません。
印刷所の印刷機の空き時間をシェアした「ラクスル」、トラックの空き荷スペースをシェアする「ハコベル」、縫製工場の空き時間をシェアする「シタテル」。
ギャラリーや飲食店内で家具を販売するコラボ型の「BRIDGE日本橋」や「カッシーナイクスシー」、宅配便の受け取りや洋服のお直しなどコンビニのシェアも進んでいます。

新興勢力だけではありません。味の素やカゴメなど大手食品メーカー6社は商品配送・物流拠点利用の共同プロジェクトを北海道で始めています。
日本郵船、商船三井、川崎汽船によるコンテナ船事業の経営統合、オイシックスと大地を守る会の経営統合なども最近のニュースです。
12/25の読売新聞では、東京TYフィナンシャルグループが、中小企業の事業承継やM&Aを支援するコンサルティング会社を来春設立するという記事も出ていました。

必ずやってくる他社とのシェア・連携・統合に備えて、ITやIoTにより会社経営のデジタル化を間断なく進めていくことが、これから50年の会社経営において経営者に求められる大きな仕事の一つとなります。

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【中小企業とIoT】見える化して、それでどうするの??

【中小企業とIoT】

前号では、社会の隅々にすでに入り込んでいるIoTの事例をご紹介して、「手が届く価格・性能の道具を使って、モノや仕事の可視化・定量化にチャレンジできる。これこそが、現在進行形のIoTの活用方法」というお話しをしました。
ここで、一つ考えなければいけないことがあります。可視化・定量化の先にあるもの、についてです。安くなったセンサーを使って、機械の稼働状況や部材の在庫、スタッフの動きが見える化できるとして、それでどうするの?という点です。

ご存知の通り、見える化はあくまでも手段であって目的ではありません。到達すべき目的はその先にあります。目的に照らして手段を考えなければ、必要かどうか、適切かどうかもわかりません。手段が一人歩きしてしまうことになります。IoTに限らず、IT活用においてもよく論点になるこのテーマ。わたしは日頃、次のような関係性をお客様にお示ししています。
見える化 → 行動 → 変化

「変化」というのは、経営上の変化を意味しています。売上が増えるとか、コストが下がるとか、顧客を増やす、生産性が向上する、スタッフが定着するとかです。「行動」というのは、その経営上の変化をもたらすための具体的な行い・施策。
すなわち、見える化により得られた判断材料を元に施策を実行してはじめて経営に変化をもたらすことができる。つまり、見える化は重要な“初めの一歩”ではあるが、二歩目となる行動を伴わないと全く意味がない。「行動」なくして「変化」なし、「行動」なくして「見える化」なし、ということになります。

例えば、「仕事はあって忙しいんだけど手残りが少ないんだよね・・」という課題。多くの企業が抱える課題だと思いますが、この場合に必要な経営上の「変化」は、採算を向上させるということですよね。では、採算を向上させるためには、どういう「行動」が必要で、そのためにどんな「見える化」が求められるのでしょうか。

採算を向上させるには、①採算の悪いものをやめるか減らす、②採算の悪いものの採算を上げる、③採算の良いものを増やす、という選択肢が考えられます。どれも簡単なことではありませんが、いずれかを実行しない限り、経営上の変化は生じません。これが「行動」です。
では、その行動を起こすために必要な「見える化」とは何でしょうか。前述したように「判断材料」を提供するのが「見える化」と考えてみましょう。

まず、商品や顧客・販路等について、それぞれの採算実態を把握しなければ始まりません。何が儲かっていて、何は儲かっていないのか。次に、その採算は時系列でどのように変化しているか、つまり、好転するのか悪化するのかを把握する必要があります。さらには、その採算はどのような経費構成なのかを理解することも必要です。そして、それぞれの経費項目がどのように組成されているのか(例えば工程別の作業時間など)、従事したスタッフの技能・生産性とはどのような関係にあるのか、・・・と、次から次へと必要な数字が思い浮かんでくるでしょう。

「IoTで何かできそうだ」という経営者の直感(これが最も大事なのですが)と、日々の経営で困っていること、すなわち、どうしても実現したい経営上の「変化」。この2つを「行動」がつなげます。
経営に「変化」をもたらすために、あなたの会社に今必要な「行動」は何ですか?現実にどのような「行動」ができますか?すべき「行動」が明確になれば、おのずと「見える化」すべきもの、そのための道具として活用すべきIT・IoTも明らかになる。
「見える化して、それでどうするの?」というこのコラムのタイトル自体が主客転倒してしまっているわけですね。

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「多摩IoT Forum(TIF)通信」に寄稿したバックナンバーを許可をいただいて転載しています。
 東京都中小企業振興公社 多摩支社 HP http://www.technology-tama.jp/
 セミナー等の開催報告 http://www.technology-tama.jp/ipf/etc/


【中小企業とIoT】IoTは”will be”なのか”being”なのか?

【中小企業とIoT】

IoT社会って、もうやって来ているんでしょうか?まだ先の話なんでしょうか?
最近のニュースからいくつかの事例を拾ってみました。

米ニューバランスとKDDIが共同開発したスマホ連動靴「FUMM(フーム)」が、この10月からよみうりランドのアトラクションに導入されたそうです。
カラーセンサーと圧力センサーを備えたスマートシューズをはいた子供たちが迷路内を移動すると、床の色に応じて音が鳴ったり、スマホ画面上に現れる恐竜たちと競争したりすることができる。はしゃぎまわる子供たちの様子が目に浮かびます。

島根県松江市の鹿島病院では、リハビリ機器とタブレット端末を連動させた治療方法を開発しました。「足こぎ車いす」というリハビリ機器でペダルをこぐと、タブレット端末に表示されたGoogleストリートビューが連動して動くことで、実際に屋外を散歩している気分が味わえる。単調なリハビリに達成感や楽しさを加えることで回復を早める効果があるそうです。

東京スカイツリーでは、超高層の窓ふき作業などを疑似体験できるVR(ヴァーチャルリアリティ)サービスを今年の7月から開始しました。これは、悪天候で視界が悪い時に行われるサービスで、ヘッドマウントディスプレイを装着してスカイツリーでの高所作業を疑似体験できます。VRは、高所や危険作業、複雑な構造・操作の確認など、企業研修での採用も今後加速していきそうですね。

トヨタ自動車、コメダ珈琲店、KDDIの3社の取り組みは少しユニークです。車の運転中にスマホを裏返して車中に置いておき、手を触れないで累積100km走行すると、コメダ珈琲店でコーヒー一杯無料で飲めるというキャンペーン企画がそれ。スマホのGPSやセンサーを活用するアプリはこれまでにもありましたが、それを業界横断的仕組みとして活用しています。

中小企業も頑張っています。
長野県の阿智精機では、トラックの積み荷を縛るベルトに、ゆるみを感知するセンサーを搭載した新商品を長野県工業技術総合センターと共同開発しました。自社製品の輸送時に荷締めベルトが緩んで事故になりかけた経験をもとに開発に取り組んだそうで、来春の製品化に向けて強度試験を行っています。

また、すでに何年も前から、M2Mやテレメタリングと言われる技術は広く社会で活用されています。自動販売機や証明写真機のつり銭管理、自動車のインタラクティブ・ナビゲーションシステム、メーターの自動検針やエレベーターの監視、遠隔地の機械の状態監視、バスのロケーション管理システムなど、例をあげればきりがないほどです。
販売、製造、物流などで利用されているバーコードやRFIDなどの自動認識技術も同様ですね。

いかがでしょうか?
見ていただいたように、モノのインターネット・IoTはすでに社会の隅々に入り込んでいます。IoT社会は、すでに始まっている現在進行形なんです。

今、目の前で起きていることは“レベルアップ”。既存の技術がより高度に、安価に、格段に使いやすくなっています。M2M通信サービスが安価になってきた。センサーが安価に高性能になってきた。製造機械の稼働状況の監視がやりやすくなってきた。
さらには、オペレータの動き、部品の動き、指示書の動き、工具の動き、などを可視化する手法も選択できるようになってきた。

IoTと聞いて、なにか突飛な新しいことをやろうと身構える必要は全くありませんし、未来を待つ必要もありません。手が届く価格・性能の道具を使って、モノや仕事の可視化・定量化にチャレンジできる。これこそが、現在進行形のIoTの活用方法なのです。

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【中小企業とIoT】自動運転なんて、未来の話だと思ってました。

【中小企業とIoT】

自動車の自動運転。
「いろいろ耳にはするけど、まだまだ先の話かな。」
「米国でのテスラの事故もあるし、解決すべき課題は多いよね。」
「身近な技術になるまでは静観さ。」
皆さんは、こんな風に考えていませんか?

2016年9月24日(土)、25日(日)の両日、長野県軽井沢町にて、G7の交通大臣による「G7長野県・軽井沢交通大臣会合」が開催されました。
2つあった会合テーマのうち1つは、「自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及」。つまりは、自動車の自動運転に関する討議です。会合後に発表された大臣宣言では、自動運転の意義を確認し、早期実現に向けて各分野で協力を進めていく方針が確認されました。
自動運転がG7参加国の政策課題として明確に取り上げられたことで、今後、国レベルでの取組みも加速され、技術開発は急速に進展していくことでしょう。

そして、そのちょうど一週間前。とても興味深い番組が放送されていました。
ご覧になった方も多いかもしれません。9月17日(土)放送のNHKスペシャル「自動運転革命」です。
日産自動車への独占取材などを通じて、日米欧の自動車メーカー各社やGoogleなどによる自動運転技術の開発競争の現況と今後の展望について網羅的に伝える内容でした。
中でも注目したのは番組後半の10分ほど。自動車部品メーカーに焦点をあて、自動運転の進展が、部品メーカー、ひいては、日本のものづくり産業に大きな変革を迫っているとした部分です。

番組では自動車用バックミラー国内最大手の村上開明堂を取材。
自動運転の進展に伴い、人が目視により後方確認することを前提とした、従来からの鏡によるバックミラー生産の行く末に危機感を持った同社が、カメラやセンサーにより後方を計測・表示する電子装置としての“バックミラー”開発に精力的に取り組んでいる様子が紹介されていました。
“革新は辺境から起きる”という言葉がありますが、さにあらず。売上の9割をバックミラーに依存する国内トップメーカー自身による、自社製品を無力化するような新技術への真正面からの取り組みが、現実に起きているというのは衝撃的でした。

これはもちろん、部品サプライヤーへも重大な影響をもたらします。
従来製品には必須だった部品や技術が新しい製品には無用なものになる。自動車産業を生んだ蒸気機関が馬車産業に大きな変革を迫ったように、自動運転という大きな技術革新は、ドミノ倒し的に広範で根本的な影響を及ぼし始めているのです。

2週連続で筆者が目にした自動運転に関する2つの出来事。
これは、もはや偶然ではなく必然と見るべきでしょう。
レベル4といわれる完全な自動運転がすぐに実現するわけではないにしても、自動車を作る技術・部品・製造プロセスの革新は、実はもう目の前に迫っているのだと。

そしてこれは自動車関連産業に限ったことではありません。
自動車関連産業の就業人口は日本の全就業人口の8.3%を占め、全製造業の出荷額等に占める自動車製造業の割合は17.5%。機械工業全体に占める自動車製造業の割合は40.0%。このように日本全体に大きな影響力を持つ自動車関連産業における技術革新は、直接・間接に日本のものづくり産業全体にインパクトをもたらします。

中小企業においても、新しい技術への備え、それに対応できるようにするための会社の体力強化、自社の仕組みの強靭化、が本当に重要です。

番組中でNHKは自動運転技術について次のように結論付けています。“夢の技術から現実への新たな段階へ入ろうとしている”と。あなたの会社に喫緊の課題として突き付けられるのも、もしかしたら明日のことかもしれません。

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【中小企業とIoT】「見える化」 その先にあるもの

IoTへの関心の高まりもあってか、「見える化」という言葉が最近のメディアで語られる機会をよく目にします。

「見える化」とは、日頃は把握しにくい事象や情報を、人の目に入りやすいように加工して提示すること。

IoT関係であれば、センサーやRFIDを使ってモノの動きを計測してグラフ等で表示してあげる。
一般的なITであれば、毎日の売上をリアルタイムで確認できるようにする、とか、
コールセンターで受電した要望をキーワード別に集計してどんな声が寄せられているか確認する、とか、
レジ横に置いたメモに来店客の属性を正の字で記録するなんてのも見える化の取組みですね。

さて、ここで肝心なのは、見える化はなんのため?という視点です。
見える化というのは手段ですから、何らかの目的がある。
目的を見失うと手段に汲々とする。

見える化の目的は何か?

わたしは最近お客様にこういう図をお示ししてご提案しています。
見える化 → 行動 → 変化

変化というのは、経営の変化ということです。
行動というのは、マネジメントにおける打ち手ということです。

見える化により得られた判断材料を元に、打ち手を打つ。
それによって、経営に変化をもたらす。
もちろん、売り上げを増やす、コストを減らす、利益率を上げる、顧客を増やす、
スタッフを育成する、等々の経営指標の変化ということです。

つまり、簡単に言えば、見える化は行動するため。
行動なくして見える化なし。

そんな風に考えています。


IoT活用で変わる中小企業経営@広域多摩イノベーションプラットフォームでの講演

2016年7月25日に、公益財団法人東京都中小企業振興公社様が開催された
IoT関連セミナーでお話をさせていただく機会を頂戴しました。


広域多摩イノベーションプラットフォーム
「中小企業にとってIoT/Industry4.0は必須か~見極める力をつけるためのセミナー~」
セミナー概要はこちら

1.富士ゼロックス様のお話し
2.つながる町工場プロジェクト
 株式会社今野製作所代表取締役 今野様
3.中小企業の見積業務の革新
 株式会社NVT・月井精密株式会社代表取締役 名取様

という大変興味深い学びの多いご講演の後に60分の時間枠を担当したもの。
4.IoT活用で変わる中小企業経営

という演題にて、主に次の点をご説明申し上げました。

1)IoTって、誰か一人が取り組んでいることではなくって、いろんな業界の人たちが、それぞれ汗をかいて新しい技術を磨いていて、それの総体として、IoTという時代になってきた。これは、「やるやらない」の議論ではなく、「そうなる」世界の中で、自分がどう取り組んでいくかのお話し。

2)IoTがビジネスモデルや競争環境を変えるというのは、他でも多く論じられていて、その通り。

3)ただし、現在地をしっかり理解すれば、すぐに取り組めるのは「検出」と「スモールデータの解析」の2つ。

4)Industry4.0でさえ、描かれているロードマップは2035年までのロングスパンなもの。

5)それを踏まえると、短期(1-3年)、中期(3-10年)、長期(10-20年)での取り組みに分けて考えると整理しやすいのでは。

100人を超えるご来場者で、たいへん盛況でしたが、終了後の名刺交換も30分ほどたっぷり時間をかけて
20人以上の皆様と有益な情報交換をさせていただきました。

ご参考に資料を添付させていただきます。(ココをクリック
「IoTに使われない、IoTに振り回されない、IoTを上手に使えば、多くの人々・社会をもっともっと幸せにできる。」
という目線でお話しさせていただいております。



人を助けるIT

6月に入って慌ただしく過ごしていましたが、いつの間にか注目記事が山積みに・・・
どうしてもこの時期は、いろいろ重なるのです。
・7月からのブルーベリー園の営業準備
・今期が始まってから最初のセミナー集中期
・秋以降の商談
・協会の総会や今期活動の始動  等

さて、せっかくの機会なので、その山積みの記事を俯瞰して見ることにしてみました。
昨今はIoTを軸にした記事に注目することが多いわけですが、
なかでも、人を助けるIT・IoT、に自分の注目が寄っていることがわかります。

・トンネル事故防止のためのIoT
・心臓に貼るIoT
・人の代わりに倉庫を動き回って在庫確認してくれるロボット

わたし個人としてのテーマは、あまり寄り過ぎているときには、
あえて他の情報も取りに行く必要あり、ということですが、
やっぱりIT・IoTは、人の役に立ってナンボ、というベースは不変。
今後もこの流れのスクラップが続きそうです。

記事を俯瞰して思うのは、本当に日本全国でいろいろな人が
汗をかいているという事実。
記事になるテクノロジー・試みは、一朝一夕でできるものではないのは
言うまでもありません。
わずかなヒント、きっかけから、やると決めて歩みを始め、
壁にぶつかりながらそれをクリアしてきた。

IT・IoTは、もっともっと社会のために役に立つものになるのは
間違いないと再度確信した次第です。