この4年のIoTの進化を振り返る(1)

IoTをテーマにあれこれと書き続けてきた当コラムですが、
実は今回で24号目、丸2年を迎えることになりました。
今回は節目ということで、IoTの進化を2回にわたって振り返ってみたいと思います。

IoTという言葉に世の中の耳目が集まりだしたのは実に4年前の2014年のこと。
Googleでの検索数もグンと伸びた年です。
この年は3Dプリンターに注目が集まり、民生ドローンの草分けであるDJI社のPhantom2が発売された年でもあります。

https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=Internet%20of%20Things

その前年2013年6月、米シスコシステムズ社は「Internet of Everything(IoE)」に関するホワイトペーパーを発表し、
文字通りあらゆるものがインターネットにつながる社会の到来を伝えました。
そして同じ年、米ガートナー社や米IDC社は300億個以上のデバイスがインターネット接続機能を持つとの予測を発表しています。
これらのプレディクション(予測)は、IoTという新しい概念を知らしめ、その成長期待に世界中を沸き立たせるきっかけとなりました。

2015年にはアップル・ウォッチが登場。
この年はIoTに関するニュースや特集がメディアで盛んに取り上げられました。
小生が「IoTと中小企業」と題したコラムを東京商工会議所様の東商ICTスクエアに寄稿したのも2015年のこと。
「大上段に構えず手軽な部分から進めましょう」という論旨ですが、
あらためて読み返してもその考え方は変わっていませんので、よろしければご一読ください。

http://www.tokyo-cci-ict.com/column/201510-02-2/

翌2016年にかけては、スマートスピーカーが各社から相次いで発売されました。
まだまだ使いこなしという面でチャレンジが必要ですが、音声という操作性には私生活でも仕事の効率化においても大きな可能性を感じさせます。
筆者が当TIFの活動に参加させていただいたのも2016年。
全国各地での中小企業向けIoTセミナーも盛んに開催された年でした。
中小製造業でのIoT活用事例として有名な愛知県の旭鉄工株式会社様での取り組みもこの頃のこと。

ところで、旭鉄工様のIoT活用についてとてもわかりやすく整理されている動画を見つけましたのでシェアしておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=AanyOK3_yQU

筆者の立場であらためて注目したのは5:07秒前後の箇所です。
IoTセンサーの活用によって現状の生産数量が定量的に見える化された、まさにその次のことです。
「目標は1時間600個だ」
なるほどです。
現在地がわかって目標が示される。すなわちギャップがわかると、人間というのはその瞬間に「どうしたらギャップを埋められるんだろう?」
「どうやって達成すればいいんだろう?」という思考が自然と動き始めるんですね。スイッチが入るというか。
見える化の本質はここにあるんだろうと思います。
目標なくして見える化なし。

2017年にはIoTの影の部分としてセキュリティに対する警鐘が鳴らされました。
RPAの登場でAIにも注目が集まり、自分の身体を瞬時に採寸できるというZOZOSUITなんかも登場して、
未来への期待と不安が入り交じる一年だったかなと感じます。
そして2018年、つい先日には自動運転タクシーの商用運転が試験的ですが開始されました。
画像認識系のAIでは官民での活用例がどんどんと出てきています。
世界では中国深センがIT先進都市のショールームとして注目を集めています。

産業別にも見てみましょう。
筆者がIoTのトップランナーとみてウォッチしている建設業界では、
ICTや3次元データを徹底活用して生産性向上を図るi-Constructionへの取り組みが始まっています。
人手不足の切迫感が強力な推進力になっているようです。

同じように人手不足に直面している業界の一つである農業。
筆者も実際に直接関与している分野ですが、ここでも様々なIoTへの取り組みが進んでいます。
自動走行する農業機械や草刈機、水田の給水を自動化するIoT機器も実証段階から実用段階へと進んでいます。
環境センサーやドローン活用は当たり前の道具になりつつあり、作業の効率アップ、職人的ノウハウを継承するためのAIの活用も着実に進んでいます。

もちろん、大手製造業でも着々とIoT導入が進んでいるようです。いくつか参考になりそうな動画がありましたのでシェアしておきます。

日立の洗濯機工場 https://www.youtube.com/watch?v=hETltJHFneo

オムロン社 https://www.youtube.com/watch?v=60N5VmKN-fk

こうして軽く振り返るだけでも、この4年間で着実に“インターネット・オブ・エブリシング”の世界が実現してきていると言って良いかと思います。
好む好まざるにかかわらず、ベネフィットがある限り人間は新しい技術を取り入れ、よりよい生活、よりよい職場環境、高い生産性を求めていくのですね。
皆さんの会社ではいかがでしょう?
IoTの活用やトライは進んでいますか?

次号は、小売り・サービス業での活用状況にあわせて、いくつか筆者の支援先企業でのIoTへの取り組みをご紹介します。

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東京都中小企業振興公社様のメルマガ「多摩IoT Forum(TIF)通信」への寄稿を転載させていただいております。

ビジネスチャットツールに注目しています。中小企業の生産性向上にどのように活かせるのか。

チャットツールというのは会話形式でメッセージをやりとりするソフトやアプリのことで、代表的なのはLINEですかね。
皆さんもすぐにイメージできるかと思いますが、文章だけでなくスタンプや写真のやりとりにも使える、
手軽なコミュニケーションツールです。
このチャットツールを、会社として契約して導入し、仕事専用に使おうというのがビジネスチャットツールで、
近年とてもたくさんのサービスが登場しています。

筆者個人でも、ここ2年ほどはこのチャットツールを公私ともに使う機会が格段に増えてきました。
・家族や友人とLINEで
・仕事仲間とFacebookメッセンジャーで
・プロジェクト仕事をBacklogやTeamsで
・商工会議所関係とChatWorkで

ネットで検索してみると、会社のコミュニケーションツールの定番である電子メールとチャットツールとの
違いや使い分けについて様々に解説されていますが、チャットツールの最大のメリットは2つあると思います。
1つは気軽なコミュニケーションができること、もう1つは、スマホ・タブレットで使えるということです。

電子メールって、基本的には記録に残す、ストックとしてのコミュニケーションだと思います。
何月何日のメールで連絡した通り、みたいな。
ところが、チャットは過去にさかのぼってやりとりを見返すのはとっても苦手な、フローのコミュニケーション。
残らない、流れていくんですね。だから、意識せずとも気兼ねなく、感想や印象、気づきを「会話」的に返信できる。
メールのような署名欄もいらないし、「○○様」とか「お世話になっております」とかもいらない。
なんならOKと一言だったりアイコンだったり、写真だけでも用が足りる。
どちらも情報を複数人で共有するために有効なツールですが、メールではどうしたって慎重に発言するのに対して、
チャットなら思ったこと、率直な意見も出しやすくなる、自然にフランクな会話ができる。ツールがそうさせるんですね。

そしてそのフランクな会話を、スマホ・タブレットのおかげで、現場で、現場とできる。
現場での発見、課題、問題提起、もちろん進捗報告も気軽にできるようになる。

筆者も参加している静岡での農業IoTの実証事業では、アプリの操作用に農家さんにタブレット端末を配布していますが、
最近、実験的にチャットツールであるGoogleハングアウトも追加でインストールしてみたんです。
もともとは農家さんへの一斉連絡を効率的に行えるようにという事務局側の意図での試みだったのですが、
実は思いのほかコミュニケーションが活性化してきまして、最近では農家さんから自発的に改善提案や気づき、
ちょっとした意見なども投稿されるようになってきました。
プロジェクトとしてはそういった一つ一つの生の声がとても役に立ちます。

それまで農家さんへの情報伝達は、ある窓口を経由して、なんてことになっていたので、
知らず知らずのうちにその人の手間暇を考えたりして、情報伝達の頻度を落としていたんですね。
まとめて伝えようとか。整理してから伝えよう、と。
農家さんからも、定例の会議では積極的に意見を発言してもらっていましたが、やはり、
農作業の現場での思いつきとか感じたことを後日の会議で説明しても、どうしてもパッションとか想いが薄らいでしまう。

思えば過去からの情報化って、基本的にはオフィスワーカーを対象にしたもので、
デスクに座ってPCを開いてから使うものがほとんどでした。それがスマホ・タブレットで一変しました。
現場で、現場と直接コミュニケーションできるツールが登場したんですね。

IT活用というと、生産管理システムを導入して業務フローやルールを見直して・・となりますが、選択肢はそれだけではない。
チャットというシンプルなツールによって、
今まで手にしていなかった現場のフランクな生の情報をリアルタイムで得ることができるようになる。
それは決して軽微なインパクトの話しではありません。

少し前に無人航空機ドローンが登場した時、農業界隈ではこぞって購入する動きが見られました。
何に使うかというと、農薬散布とか畑センシングとかいう革新的な話しではなく、単純に上空から畑を眺めるため。
今までは見えなかった情報が手に入る。それだけで十分意味があると。
新たな視座から新たな情報が得られれば、これまでの経験と照らし合わせて新たな発見を得ることができる。
情報化とはそういうことなんだと思います。

何のためにIoTセンサを使うのだろう?

以前ご紹介した、経産省とロボット革命イニシアティブ協議会が行った2つの調査では、
中小製造業でのIoT活用について合計60事例がまとめられ、うち38事例は各種センサを活用した事例でした。

確かに、IoTといえばセンサというイメージが強いですね。
機械の稼働状況を計測したり、温度や湿度を計測したり、振動や音を測定したり。
バイタルセンサなどでは心拍数や脳波の測定もできる。
ハイパースペクトルカメラを使うと可視光以外の情報もセンシングできる。
最近では、スマートフォンのマイクもセンサとして使われるなど、様々なセンサデバイスが登場しています。

センサによる可視化、データ化というわけですが、そもそも、データが得られると、どんな利点があるのでしょう?
ここでは、経営におけるデータの効用・意義について整理してみたいと思います。

まず始めに、データは物事を定量的に示してくれます。
日数、時間数、作業回数、生産量などについて、データは数値という切り口で表現してくれます。
「多い・少ない」「早い・遅い」という表現に対して、「10kg多い」とか「3日早い」のように、
具体的な「指標値」を提供してくれるのがデータです。
指標値が得られることで、初めてそれを他の数値と「比較」することが可能になります。
そして、他の数値と比較をすると、データに「意味」が出てきます。
過去の数値と比較をすれば、過去からの変化が浮き彫りになりますし、他の品番と比較すれば、
品番ごとの生産性の違いが確認できたりします。
つまり、データがあり、比較をすることで、変化や違いを通して日々の経営の状況を知ることができる。
経営が「見える」ようになるわけです。
経験が豊富であれば、勘と度胸で今後の見通しを判断することも行えますが、
経験が少なくても、データが経験を補って一つの判断材料を提示してくれるわけです。

次に、データは「記憶」の代わりに「記録」しておいてくれます。
人間の記憶はあてになりません。記憶は時間が経つと次第に薄れていきます。
そもそも人間の脳は、忘れるようにできているそうです。
次から次へと起きた細かな事象を全て忘れずに記憶していたら逆に生きていけないそうで、
生存に不要な情報からどんどん忘れていきます。
「エピングハウスの忘却曲線」というドイツの研究がありますが、
人は記憶した後、20分で42%を忘却し、1時間後には56%を忘却、一か月後には79%を忘却してしまうそうです。
だから、大事なこと、忘れたくないことは記録しておく。
自分の脳で記憶する代わりに、データとして記録しておくことで、
忘れることなく後からもう一度利用することができます。

最後に、データは便利に二次利用することができます。
データ化されている情報は、様々な情報処理技術のメリットを活かすことができます。

・検索が容易: 必要な情報をキーワードや時系列で短時間に探し出すことができます。
パソコンのどこに保存したか忘れてしまったようなデータも、検索すれば、コンピュータが探し出してくれます。

・多くの情報を処理できる: データ化されている情報を、コンピュータはいとも簡単に集計してくれます。
手作業で数値を拾って集計するよりも、断然に短い時間で計算することができます。

・持ち運びしやすい: 情報はデータにすることで、驚くほどコンパクトになります。
様々な情報をデータ化しておくことで、省スペースに保管しやすく、なおかつ、持ち歩きやすくなります。

・加工しやすい: データは自由に加工することができます。
一つのデータを様々に並び替え、絞り込み、集計し、様々な用途の帳票を作成することもできます。

・共有しやすい: 情報がデータ化されると、
地理的な制約、時間的な制約を超えて、より多くの人と、多様な形でコミュニケーションできるようになります。
組織内での情報の共有、協力会社との情報の共有など、今までよりも密接にコミュニケーションしやすくなります。

このように、データは経営の質・精度の向上に活かすことができるものです。
ただし、使わなければ、どれだけせっせと集めても無用の長物。無価値。
経営者の「見たい」という意思の存在が、それを活かす大前提なんですね。