以前ご紹介した、経産省とロボット革命イニシアティブ協議会が行った2つの調査では、
中小製造業でのIoT活用について合計60事例がまとめられ、うち38事例は各種センサを活用した事例でした。
確かに、IoTといえばセンサというイメージが強いですね。
機械の稼働状況を計測したり、温度や湿度を計測したり、振動や音を測定したり。
バイタルセンサなどでは心拍数や脳波の測定もできる。
ハイパースペクトルカメラを使うと可視光以外の情報もセンシングできる。
最近では、スマートフォンのマイクもセンサとして使われるなど、様々なセンサデバイスが登場しています。
センサによる可視化、データ化というわけですが、そもそも、データが得られると、どんな利点があるのでしょう?
ここでは、経営におけるデータの効用・意義について整理してみたいと思います。
まず始めに、データは物事を定量的に示してくれます。
日数、時間数、作業回数、生産量などについて、データは数値という切り口で表現してくれます。
「多い・少ない」「早い・遅い」という表現に対して、「10kg多い」とか「3日早い」のように、
具体的な「指標値」を提供してくれるのがデータです。
指標値が得られることで、初めてそれを他の数値と「比較」することが可能になります。
そして、他の数値と比較をすると、データに「意味」が出てきます。
過去の数値と比較をすれば、過去からの変化が浮き彫りになりますし、他の品番と比較すれば、
品番ごとの生産性の違いが確認できたりします。
つまり、データがあり、比較をすることで、変化や違いを通して日々の経営の状況を知ることができる。
経営が「見える」ようになるわけです。
経験が豊富であれば、勘と度胸で今後の見通しを判断することも行えますが、
経験が少なくても、データが経験を補って一つの判断材料を提示してくれるわけです。
次に、データは「記憶」の代わりに「記録」しておいてくれます。
人間の記憶はあてになりません。記憶は時間が経つと次第に薄れていきます。
そもそも人間の脳は、忘れるようにできているそうです。
次から次へと起きた細かな事象を全て忘れずに記憶していたら逆に生きていけないそうで、
生存に不要な情報からどんどん忘れていきます。
「エピングハウスの忘却曲線」というドイツの研究がありますが、
人は記憶した後、20分で42%を忘却し、1時間後には56%を忘却、一か月後には79%を忘却してしまうそうです。
だから、大事なこと、忘れたくないことは記録しておく。
自分の脳で記憶する代わりに、データとして記録しておくことで、
忘れることなく後からもう一度利用することができます。
最後に、データは便利に二次利用することができます。
データ化されている情報は、様々な情報処理技術のメリットを活かすことができます。
・検索が容易: 必要な情報をキーワードや時系列で短時間に探し出すことができます。
パソコンのどこに保存したか忘れてしまったようなデータも、検索すれば、コンピュータが探し出してくれます。
・多くの情報を処理できる: データ化されている情報を、コンピュータはいとも簡単に集計してくれます。
手作業で数値を拾って集計するよりも、断然に短い時間で計算することができます。
・持ち運びしやすい: 情報はデータにすることで、驚くほどコンパクトになります。
様々な情報をデータ化しておくことで、省スペースに保管しやすく、なおかつ、持ち歩きやすくなります。
・加工しやすい: データは自由に加工することができます。
一つのデータを様々に並び替え、絞り込み、集計し、様々な用途の帳票を作成することもできます。
・共有しやすい: 情報がデータ化されると、
地理的な制約、時間的な制約を超えて、より多くの人と、多様な形でコミュニケーションできるようになります。
組織内での情報の共有、協力会社との情報の共有など、今までよりも密接にコミュニケーションしやすくなります。
このように、データは経営の質・精度の向上に活かすことができるものです。
ただし、使わなければ、どれだけせっせと集めても無用の長物。無価値。
経営者の「見たい」という意思の存在が、それを活かす大前提なんですね。